４．１．４ パラドール （スペインの宿事情）
スペインの宿事情で、パラドールは、省けないでしょう。 家内も、一度泊ってみたい、それも、トレドの、と何度も聞かされていた。
パラドール (Parador) は、スペインの国営ホテルのことである。 国営であるからこそ、持てる歴史的建物、古城や修道院といった、国民の最高の財産を、ホテルにすることが出来るというものだ。 日本の国民宿舎とは、立地条件も、考え方も、訳も、違う。
パラドールも、三つ星から五つ星までランクがあるが、星を一つ取った程度の料金で泊れるから、人気があり、予約無しで、飛び込みで、泊れることは、滅多にない。
その滅多にないことが起こった。 私の旅行スタイルでは、あらかじめ、修学旅行のように、宿を決めておく、ということはしない。 宿探しは、ほとんど偶然性の賜物であるが、そこが、また、旅の醍醐味でもあった。
トレドに着いたとき、何はともあれ、家内の希望どおり、パラドールに行ってみた。 ここは、人気のあるものの一つであるから、空いている可能性は低い。 それでも、初めから諦める必要は、何もなかった。 旅行ガイドブックで見る、トレドの絵や写真も、このホテルから撮ったものと思われるほど、絶好の立地条件だ。 建物も重厚なつくりだった。
部屋は空いているかと聞くと、高いのが一つだけ空いているという。 あいにく、今日は、日本の団体さんが来ていて、安い方の部屋が満室で、明日なら、大丈夫という。
料金を聞いて、家内は、戸惑いの色を見せて、どうしたものかと私の顔を見たが、私は驚かなかった。 それだけ、貧乏旅行を強いていたということだろう。 東京のホテルのことを思うと、大したものでもない。
部屋を見せて欲しいというと、もちろん、といって案内してくれたが、さすがに素晴らしい部屋であった。 ドアを開けると、ソファーやテレビが置いてある居間だ。 正面の大きな窓からトレドの町の全景が見渡せる。 さらに窓の列が左奥にも展開していて、更にその奥にも、展開しているという、角部屋であった。
居間の隣が、洗面台が二つ、バブルジェット付きバスタブなどのある洗面所、その隣がダブルベッドと肘掛け椅子が二つある寝室、そして、この三つの部屋を、大きな窓が連続して、列をなして、囲んでいるというものだった。
ここで、案内してくれた人が、どうするのかと、問うて来た。 断る理由が見つからない。 直ぐに、オーケーしたら、家内とその案内の女性が歓声を上げた。
先ほどから、家内が、わぁーわぁー言っていたので、私たちのことを、我がことのように、喜んでくれたのである。 彼女も、この部屋には自信があったのであろう。 誇らしげな顔をしていた。 家内が、二度目の旧婚旅行みたい、というと、そうだろう、そうだろうと、喜んでくれた。
| トレドの灯り |
 |
| 《トレドの灯り》 2005/04/21 Photo by Kohyuh |
荷物を置いて、いざ町へ、と車の準備をしていたら、マドリッドのレンタカー駐車場で出会った、例の、米国人の夫妻が、丁度ホテルから出てくるところであった。
部屋はあったか？ と聞くと、なかったという。 そうだろう、私たちが一歩早かった。
それで、昨日は何処に行ったか、という話になった。 私たちが風車の町、コンスエグラ (Consuegra) に行って来たというと、海外ドライブ（１１） のところで紹介した、例の、清潔か、電話はあるかという、宿選びの三原則 の話になった次第である。
ベンツを乗り回す、お金持ちではあったが、旅行スタイルは、私と変わらないことを知って、早速、そのホテルを紹介した。
コンスエグラは、ホテルが二軒しかない小さな町だ。 しかも、一軒は、駐車場がないから、選択の余地がない。 それでも、風車のある山の上からの景色は、一見の価値がある。
|
前へ｜▲｜次へ
|
八幡自然塾