５．２ 助っ人たちのこと
数知れず道に迷ったことがあるが、また一方、そのときどきに、出逢った助っ人たちのお陰で助けられたこともまた、数知れずあった。 旅先で色々な親切に出会うと、その国のことが、より一層好きになるものである。 また、よき思い出として長く心に残ることになる。
乗るのも怖い一人乗りの鳥篭のようなエレベータや、恐ろしくスピードの速いエスカレータなど、または、それらが無かったりして、いろんなことで、不便な目に遭遇したりすることも多い。
しかし、そのことが理由で、その国を嫌いになったりすることは決してなかった。 要するに、建物であれ、交通機関であれ、物理的な良し悪し、便・不便は、その国に対する好感度とは全く関係がないということでしょう。
また、不思議なことに、スリがやたらと多い国もあったが、それでも、その国のことが嫌いになったことはなかった。 もちろん、被害に遇えば違うのかもしれないが、今のところ、まだ経験したことがないので、何とも言えないことではであるが、一方では、それが暴力的ではないことと、それを防ぐことも自己責任という意識もあって、決定的な要素ではないように思う。
前回は、道に迷ったときには人に聞くのが一番と言いながら、そうでもないような事例を紹介したが、今回は違う。 多くの人の助けを受け、窮地脱出に成功した事例を紹介する。
全て善意に満ちていた。 そして、これが好感度アップに繋がらない訳がない。
§1 道は警察で聞くのがおすすめ
フランスはマルセーユ Marseille の隣町であるカシス Cassis から、プロヴァンス Provence のリュベロン地方 Luberon の中心的な町であるアプト Apt を目指していた。
もちろん高速道路を利用しなければ、これだけの距離はこなせない。 エクス・アン・プロバンス Aix-En-Provence を通過して、分岐点の町であるペルチュア？ Pertuis という小さな町に入り、いきなり道に迷った。
地図上では道に迷うようなところではない。 この町が Ｔ字路のようになっていて、我々にとっては、そこから単に、西に行くか東に行くかという選択肢があるだけだった筈である。 そして、西に進路を取ることであった。
それが、今まで快適に飛ばしてきた道が、町に入ると急に細くなった。 地図では単に Ｔ字路のようでも、一旦、町に入ると、八幡市で言えば、八幡市民図書館の前の道に、突然のごとく進入したことに例えられようか。
それに一方通行であったりするから、反対方向に行くような気がするし、進むほどに方向感覚を失ってしまった。 もちろん交通標識もなかった。
こういう場合、むやみに走り回らず、早めに道を聞くのが良い。 丁度そこに、駐車できる広場があり、横に警察署が眼に入ったからである。
道に迷った場合、もし警察官に出会えば、一般人を捉まえて聞くより、よほど良い。 その地域の道路状況の知識は豊富だし、また、経験上、皆さんとても親切であった。
ところが警察署はあっても警察官がウロウロしている訳でもなく、また、昼休み時で町には人影もない。 それに、インフォーメーションで聞くにも、どこにあるか分からないし、例え分かったとしても、昼休み時では、尚更、期待できない。 そのオープンを待っていては日が暮れる。
観光客相手の商売であるにも関わらす、インフォーメーションにしても、かっての、フォア城見学に際しても、窓口を閉められて、何時間も無駄な暇を潰さねばならないということがあった。
また、最近になって、現金の引き出しがカードで出来るようになったから、ずいぶん楽になったが、以前は、銀行や郵便局から閉め出されて泣いたことが何度もある。 それもこれも長～い昼休みのせいである。
それが、ありがたいことにその警察署は、昼休み時だからといってドアを閉めてはいなかった。 それでも、何も悪いことはしていないのに警察署には入り難いものである。
大体、車を停めたところが、駐車禁止区域であるとか何とか、イチャモンをつけられては踏んだり蹴ったりであろう。 そういう思いもあったに違いない。
ドアを開けて中に入ると、左手に、またドアがあり、それはガラス窓になっていて中が見通せた。 見ると、銀行のカウンタのようなものが奥まで続いてる大部屋である。
昼休みで電気を消していたのか薄暗かったように記憶しているが、単に明るいところから入って来たから眼がなじめなかったのか、それは定かではないが、要するに業務時間外の感じがしたと言いたかっただけである。
近くに居た職員に声をかけると直ぐに応対に出てくれた。 警察官の服装である。 事情を説明すると親切にも地図を出してきて説明してくれた。 それもインフォメーションに置いてあるものと同じであろう町の観光地図である。 それも中々立派な出来具合であった。
その地図に蛍光ペンで道順に印をつけて、さらに実際に外に出て、手で指し示して、行くべき道を教えてくれた。 もちろんその観光地図もくれたから、インフォーメーションに立ち寄る必要もない。
道に迷ったら警察署で聞くのがお勧めである。 インフォーメーションのように、昼休みだからといって窓口を閉めることはない。 また、観光地図も用意されているようだ。
日本の警察署も見習うべきであろう。 民間で出来ることは民間に移行するのも良いが、官庁で出来ることは官庁でもするべきではなかろうか。 特別に職員を増やさなくても、皆さんがサービス精神を持っていれば出来ることである。
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